美濃焼 〜経済産業大臣指定伝統的工芸品

美濃焼(みのやき)

  • 岐阜県
  • 経済産業大臣指定伝統的工芸品

■ 解説
美濃焼は、岐阜県の南東部(東濃)に位置する土岐市・多治見市・瑞浪市・可児市を中心とした一帯で焼かれる陶磁器です。
主に普段使いの食器類を中心とした日用雑器を多く生産し、日本の陶磁器生産量の約6割を占めています。
「美濃焼」との呼称はあるものの、それを特徴づける焼物としての種類・様式がありません。逆説的に美濃焼は「特徴がない点が特徴」と言えるかもしれません。
また、「志野焼(しのやき)」や「織部焼(おりべやき)」も美濃焼の一種で、美術的にもたいへん優れた銘品も数多くあります。

■ 歴史
濃尾平野周辺には「美濃焼」「瀬戸焼」「常滑焼」「萬古焼」など多くの焼き物の産地があります。これはこの地域に良質な陶土となる粘土が豊富にあるためです。
この粘土は、700万年前〜120万年前に現在の濃尾平野南部に存在した大きな湖(地質学では「東海湖」と呼ばれています)の堆積物に由来しています。

岐阜県東濃地方の焼き物の歴史は、1,300年前に始まります。
5世紀頃(古墳時代後期)、朝鮮半島から窯を使った焼き物の製法が日本に伝わると、それまでの土器※1に替わって須恵器(すえき)※2が作られるようになりました。
7〜8世紀頃(飛鳥〜奈良時代)には東濃地方でも作られるようになり、これが「美濃焼」の始まりとされています。
10世紀頃(平安時代)になると、三大古窯のひとつ「猿投窯(さなげよう)」の影響を受けつつ、白瓷(しらし)※3と呼ばれる釉薬を施した陶器が焼かれるようになりました。そして醍醐天皇の命により編纂された「延喜式」で「美濃国は陶器調貢の国のひとつ」と定められるほどに大きく発展しました。
安土桃山時代に茶道が盛んになると、優れた焼物が求められるようになりました。織田信長や豊臣秀吉の保護を受けた美濃焼は、わずか30年ほどの間に「黄瀬戸」「瀬戸黒」「志野焼」「織部焼」など数々の優れた焼物を生み出し隆盛を極めました。
江戸時代になると茶人たちの好みが変わったことで優れた茶器としての美濃焼は次第に忘れ去られ、庶民が日常で使う生活雑器としての焼物が中心になっていきました。
こうして種々多様な焼物を大量生産する技術が発達し、それが今日にまで引き継がれてあらゆる種類の焼物を作る「特徴がない点が特徴」の美濃焼となりました。

美濃の焼物はずっと瀬戸で焼かれたものだと思われていました。当時の文化の中心であった京都では焼物の産地として「瀬戸」の方が有名だったためです。近畿より東の地域で陶器を「セトモノ」とも呼ぶのもそのためです(西日本では唐津焼から「カラツモノ」と呼びます)。
1930年(昭和5年)陶芸家・荒川豊蔵(あらかわとよぞう)により、黄瀬戸・瀬戸黒・志野焼・織部焼などの優れた焼物は美濃(土岐周辺の窯)で焼かれたものだと探り当てました。そのため、近年それらを“桃山時代に美濃で焼かれた陶器”として「美濃桃山陶」とも呼びます。

1978年(昭和53年)7月22日、「美濃焼」は伝統的工芸品に指定されました。

■ 黄瀬戸・瀬戸黒
室町時代末期から安土桃山時代の頃に焼かれた陶器です。
黄瀬戸(きぜと)はこの記事の下の画像のような薄い黄色の釉薬の焼物です。ワンポイントの緑がかった部分は胆礬(たんぱん)と呼ばれ、黄瀬戸に多い装飾です。
瀬戸黒(せとぐろ)は焼成中に取り出し急速に冷やすことで深みのある黒に仕上げた焼物です。その技法から「引出黒(ひきだしぐろ)」、安土桃山時代の天正年間によく作られたことから「天正黒」とも呼ばれます。その製法は後に途絶えてしまいましたが、昭和になって荒川豊蔵により復活しました。

■ 志野焼
安土桃山時代の頃に土岐市周辺で焼かれた陶器です。
「百草土(もぐさつち)」という白みの粘土に志野釉(しのゆう)とも呼ばれる白釉を使い焼かれます。
それまで日本国内で焼かれた白い陶器は無かったため、当時の茶人に大変珍重されました。 室町時代の香道家・志野宗信(しのそうしん)が、美濃の陶工に茶器を作らせたのがその始まりといわれています。
瀬戸で焼かれた物と思われていましたが、昭和になって荒川豊蔵が土岐で焼かれたと突き止めるとともに、途絶えていたその技法も復活させました。

■ 織部焼
1605年(慶長5年)頃から土岐市周辺で焼かれ始めた陶器です。
茶聖・千利休に師事した利休七哲の一人、茶人・古田重然(ふるたしげなり)またの名を古田織部(ふるたおりべ)によって確立した自由で斬新な意匠の茶器です。

※1 土器:粘土を野焼きで焼き固めたもの。焼成温度が800℃程で低い。 ※2 須恵器:窯を使い1,000〜1,100℃程で焼く。陶器よりも焼成温度が低く土器の特製が残るため、陶質土器とも呼ぶ。釉薬を使わない素焼きが一般的。
※3 白瓷:植物灰の釉薬を施した日本で初期の陶器。

外部リンク 美濃焼伝統工芸品協同組合

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