長良川鵜飼 〜国指定重要無形民俗文化財

長良川鵜飼(ながらがわうかい)

  • 岐阜県岐阜市/関市・長良川
  • 国指定重要無形民俗文化財
  • 重要有形民俗文化財

■ 解説
長良川鵜飼は、岐阜を流れる長良川で行われている伝統的な鮎を捕る漁で、夏の夜の風物詩となっています。
鵜飼は1,300年前から伝わるこの漁法は、夜間に行われます。鵜飼舟の舳先から川面にかがり火を掲げ、10羽余りの鵜を操って光に驚いた鮎を捕らえます。
鵜は飼い慣らした「海鵜」で、捕らえた鮎を丸呑みにしますが、首を紐で巻いて大きなものは飲み込めないようにしてあり、吐き出させます(喉を通る小さな鮎はそのまま食べ、またあまり食べていない鵜には漁が終わった後に鮎を与えています)
鵜が捕らえた鮎には嘴の跡があることから「歯形の鮎」と呼ばれます。鵜に噛まれた鮎は瞬時に締められるため新鮮でおいしく、数も少ないことからとても珍重されています。
鵜飼は岐阜以外でも行われていますが、長良川にだけ「御料場」があり禁漁区となっています。そこで行われる鵜飼を「御料鵜飼(ごりょううかい)」と呼び、捕れた一部の鮎は皇室に献上され、伊勢神宮や明治神宮に奉納されます。
また長良川で鵜飼を行う漁師は宮内庁の保護を受け「鵜匠(うじょう)」と呼ばれています。鵜匠は皇室の儀式などを執り行う宮内庁式部職に属した公務員で、世襲制になっています。
現在の鵜飼は主に観光としての漁となっていますが、古くから伝わる技術と道具を守り続けている漁法であり、その民俗的価値はとても高く貴重です。
現在、岐阜市は長良川鵜飼をユネスコ無形文化遺産登録に向けて取り組んでいます。

■ 歴史
日本の鵜飼の歴史はとても古く、古墳から鵜飼を表したと思われる埴輪※1が出土しており、古墳時代には既に鵜を使った漁が行われていたようです。
飛鳥時代、正倉院に納められた702年(大宝2年)の美濃国の戸籍に鵜飼を職業としていた人たちの記述※2があり、長良川鵜飼1,300年の歴史の由来となっています。また平安時代の日本最古の辞典と言われる「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」には、美濃国方県郡の「鵜養郷」という鵜飼をしていた村※3の古い地名が記されています。
室町時代には第6代将軍・足利義教(あしかがよしのり)や太政大臣・一条兼良(いちじょうかねよし/かねら)が長良川の鵜飼を見物をしたという記録があります。
1568年(永禄11年)、織田信長の嫡男・信忠(のぶただ)と武田信玄の娘・松姫(まつひめ)との婚約の祝儀で、信玄の使者として岐阜を訪れた秋山虎繁(あきやまとらしげ)に信長が鵜飼を見せてもてなしました。そして捕れた鮎を自ら選び武田家へ贈ったそうです。
1615年(元和元年)には徳川家康と秀忠が大坂夏の陣からの帰途岐阜に立ち寄り、鵜飼を見物したと伝えられています。それ以来、徳川家へ鮎寿司が献上されるようになりました。
1688年(貞享5年)年6月、呉服商で俳人の安川落梧(やすかわらくご)の招きにより俳聖・松尾芭蕉が鵜飼見物しました。その時詠んだ句が
おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉
です。
明治になると、岐阜県は宮内省(現・宮内庁)に鵜飼の庇護を願い出ました。そして1890年(明治23年)長良川に御料場が置かれ、鵜匠は宮内省主猟寮の所属となりました。
1936年(昭和11年)にチャールズ・チャップリンが来日の際、岐阜を訪れて鵜飼を見物し「Wonderful!」と絶賛したと言われています(ただし戦後の来日で再び鵜飼を見物した時は『戦前のウ飼いはこんなに派手で雑然としていなかった。朝日新聞 1961年7月27日朝刊』と落胆したとか)
昭和40年代には30万人の観覧者数を記録しました。現在も毎年10万人を超える人々が訪れており、海外からも多くの観光客が鵜飼を楽しんでいます。

■ 鵜飼観覧
長良川鵜飼が行われているのは、岐阜市古津地区と関市立花地区の2ヵ所で、毎年5月11日から10月15日までの期間です(悪天候や川の増水などで船が出せない時は中止になります)。また、中秋の名月の日も休みにります。
鵜飼は川岸や橋の上からも見ることもできますが、やはり間近で見る「鵜飼観覧船」の利用がお勧めです。
岐阜市の鵜飼は全国最大規模で、6艘の鵜船が漁を行います。鵜船と観覧船が併走する「狩り下り」では鵜匠が巧に鵜を操る様子を見ることができ、また全ての鵜船が揃い鮎を追い込む「総がらみ」はとても迫力があります。
関市小瀬の鵜飼は岐阜市に比べて小規模ながら、自然に囲まれた地は人口の光も少なく、昔の素朴な鵜飼に思いを馳せる趣があります。

1955年(昭和30年)4月22日、鵜飼用具一式122点が重要有形民俗文化財に指定されました。
2015年(平成27年)3月2日、岐阜市・長良川鵜飼と関市・小瀬鵜飼の「長良川の鵜飼漁の技術」が国指定重要無形民俗文化財に指定されました。

※1 保渡田八幡塚古墳(群馬県)から出土。 鵜飼―甲斐の川漁と鵜飼をめぐる伝説―
※2 「御野國各牟郡中里(美濃国各務郡中里・現在の岐阜県各務原市那加)」「鵜養部目都良売(うかいべのめづらめ)」
※3 長良川右岸(北側)の下鵜飼・黒野・折立のあたり

■ 開催日時・場所

お知らせ
開催期間 5月11日から10月15日
鵜飼休み(9月21日)、増水等により実施されない場合がございます。
鵜飼開きは、新型コロナウイルス感染症の影響により延期となっています。

→ 6月21日に開始されました。

外部リンク ぎふ長良川鵜飼
外部リンク 小瀬鵜飼
外部リンク 長良川うかいミュージアム
外部リンク 岐阜市漫遊>岐阜市観光情報>長良川鵜飼
外部リンク 宮内庁>皇室に伝わる文化>御料鵜飼
外部リンク 岐阜市歴史博物館>館蔵品のご紹介>鵜飼資料

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