岐阜うちわ
岐阜県郷土工芸品
「岐阜うちわ」は岐阜県の伝統工芸品で、美濃和紙が長良川を使って運ばれてきたことと周辺には良質な竹が豊富にあったことから作られるようになり、岐阜市の特産品となりました。
岐阜うちわは古くから作られていたようで、室町時代の「御湯殿上日記」にその記述があります。ただその頃の岐阜うちわは現代のものとは異なる作りだったようです。
江戸時代、京都から「京(みやこ)うちわ」の技法が伝わると岐阜でも作られるようになりました。そのため今日に見られる伝統的な岐阜うちわは京うちわの流れを汲む形状をしています。
改良が重ねられて丈夫になった岐阜うちわは評判となり、明治時代中期には全国有数の生産量となりました。
岐阜うちわには「塗りうちわ」「渋うちわ」「水うちわ」の3種類があります。
塗りうちわ:
漆を塗ったうちわで、幕末に作り出されました。漆を塗ることで耐久性を高めるとともに、赤や黄など色鮮やかで艶がある美しい仕上がりになります。
明治初期はこの塗りうちわが「岐阜うちわ」の特徴となっていました。
渋うちわ:
柿渋※1をハケ塗りしたもので、耐久性に優れているので火を熾すときになど実用的な使われ方をしました。年月を経るとベージュから褐色に変わっていきます。
全国各地で作られていますが、その中でも岐阜うちわは品質が良く丈夫だったそうです。
水うちわ:
薄い和紙である「雁皮紙(がんぴし)※2」に「シェラック※3」という天然のニスをコーティングすることで透明感がある仕上がりになります。
水のように透けて見えることから「水うちわ」と呼ばれるようになりました。また、鵜飼見物の際にうちわを川面に浸し仰いで涼をとったからとも言われています。
1887年(明治19年)に勅使河原直次郎(てしがわらなおじろう)によって考案され、日用品であるうちわを美しい工芸品にまで高めたことで、長良川の鵜飼見物に来た観光客の土産品として人気になりました。
「水うちわ」は雁皮紙の入手が難しくなったことなどにより一時期生産が途絶えてしまいます。しかし2005年(平成17年)、岐阜市の企業の「家田紙工」が展覧会のために製作・出品し、再び世間の注目を集めました。その後、カテゴリとしての「水うちわ」の消費ニーズも高まりを見せ、地元工芸士の方々により生産技術も受け継がれています。
最近テレビ番組で「水うちわ」が取り上げられることが多くなると、その繊細で涼しげな見た目が話題となり、人気が再燃しています。
1992年(平成4年)3月30日に岐阜県郷土工芸品に指定されました。
※1 柿渋:未熟な渋柿の絞り汁を発酵・熟成させた液で薬や防腐剤などに使われた。また紙に塗布すると丈夫になり耐水性も持たせられるため、和傘や昔の雨合羽ににも使用された。
※2 雁皮紙:ジンチョウゲの一種である雁皮(がんぴ・別名カミノキ)を原料として漉かれる高級な和紙。雁皮の繊維は細く短いため、漉くと緻密な紙になる。厚みに「厚様」「中様」「薄様」の種類があり、水うちわには「薄様」が使われる。
※3 シェラック:カイガラムシの分泌物から作られる天然のニス。バイオリンなどの楽器や家具のニスとして使われる他、無味無臭で人体に無害なので食品や薬品のコーティング材としても使われる。
外部リンク
家田紙工>水うちわ
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住井冨次郎商店>水うちわとは
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川原町屋>和雑貨商品紹介
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